付表 アメリカ調査旅行の日程(1996年11月〜12月、15日間)
2)コンピュータ・ネットワーキング
農業情報はデータ通信が必須である。また、操作性や理解度を高める観点で図形等の利用ニーズが高まるにつれて通信データ量は膨大な量になるし、双方向通信システムも必要である。国家プロジェクトとして推進されているのが、“スーパー・ハイウェイ”であるが、末端での一般的な利用が可能になるのはまだ5〜6年先であると言われている。
USDAでスーパー・ハイウェイの農業への貢献を尋ねた。その電送路の大きさ(末端の伝送路は電話ケーブルもCATV同軸回線もどちらも可とのこと)から「インターラクティブ・テレビ」と称されるパソコン・テレビで鮮明な動画情報の通信が可能になるという。これを応用すると、圃場や畜舎の遠隔モニターやロボット化を一段と推進しようとしている。世界中と電子メールを交換も交換できるようにする。毎日、USDAや民間の提供するマーケッテング情報やニューズ・レターを即座に入手したり、電子売買が可能になる。専門家による遠隔操作で作物の病害虫診断、生育診断、衛星から送られてくる高解像度の画像情報から精度の高い世界各地の作物の収量予測も可能にする。
だが、当面の情報化推進の目玉は「インターネット」であると言う。各大学普及部には
州内に散らばるキャンパス、研究施設、そして郡普及所を接続する専用のネットワークが
あるが、現在構想されているスーパー・ハイウェイの先駆けとも言うべき光ファイバー・
ケーブルや衛星通信を使って、そのような各州大学普及部間のネットワークのインターネ
ット融合が進んでいる。普及部スタッフはもち論であるが、農業経営者もインターネット
上のどの州立大学のサーバーにでも直接アクセスし、自分が最も利用したいソフト・ウェ
アやデータ・ベースを利用できるように整備が進んでいる。
例えば、今回、訪問したコーネル大学普及部CCES(Cornell CooperativeExtension System)には、UNIXマシン(1993年に導入)をホスト機とするCENET(Cornell Extension Network )がニューヨーク州内の57か所の郡普及所を接続している。現在のシステムはインターネット対応が不十分なために、郡普及所システムを含めた全システムを1997年中の一新を目指して更新が進行中である。新システムでは、農業経営者の直接アクセスが期待されていると言う。
3)フロリダ大学IFAS(Institute of Food & Agricultural Science)のコンピュータ・ネット・ワーク
どの大学普及部のネットワーク・システムもほぼ同じであるので、ここではフロリダ大学の場合ついて紹介する。フロリダ大学IFASとは、農学部(College)、普及部、各種農業研究ンターを統括する組織である。普及部は組織上は独立組織であるが、スタッフは多くが学部兼任でり、人事配置はかなり流動的であると言う。予算的も有機的な配分構造になっている。人事が流動なのは、フロリダ州が温帯から亜熱帯までを含む気象条件、海に囲まれた立地性から、さまざまな作、果樹、野菜、畜産が生産されていて、スタッフは専門性を保ちながらも常に異なる専門部門と同して学際的な研究、普及活動を実践しているからだとのことである。
コンピュータ・ネット・ワークの中枢的管理を担うのが、1980年に創設した“IFASネット・ワーク・センター”である。“ネットワーク・コミュニケーション”をスローガンにして、従来の交錯して多数あった学内教育・研究用ネット(FIRN)や学外接続ネット(24ヶ所のリサーチ・サイト、ならびに67ヶ所の郡普及所)を、統一したプロトコルで管理し、オープン・ネットワークにして、ユーザーの利便性も高める(特に、Connectability)のがセンターの目的である。キャンパス外の2ヵ所にVAXのバック・アップ回線が形成されている。
同センターがIFASの全部署のスタッフ、および学生ユーザー(クライアント数でみると、大学予算で購入し、登録しているキャンパス内端末3000の端末、これとほぼ同数のスタッフや学生の個人端末、それに普及部関係のキャンパス外端末)を統括管理しているのが、センター長のR.ヒンツ教授以下、全職員で12名(VAXマシン担当4名、PC端末担当3名、通信関連ソフト担当2名、事務・管理職3名)という小さな所帯である。
1981年にMS−DOSを全クライアントに推奨する運動を開始、1985年よりBITNETに加入し、1987年からインターネットに加入した。同センター内には、研究用にVAX6320と事務処理用にVAX4000を設置している。また大学内は構内が500MB、建物内が100MBの電送路敷設を1989年に完成させている。キャンパス内では、DEC−netとTCP/IPの両方を運用していて、Win95上で自由に切替えできるようになっている。通信用ソフトウェアや基本的なアプリケーション・ソフトはセンターがサイト・ライセンスを得て安価に配付している。インターネットのIFASホーム・ページは“ARIGATOR”という愛称で親しまれている。アドレスは次のようである。
http://www.ifas.ufl.edu/www/agator_home.htm
1994年の公式開設で、現在500ページ以上になる。IFASのスタッフなら、身分さえ公表すれば自由にホーム・ページを追加できるようになっているので、ページ数は常に増殖中している。
4)高度情報化時代へ向けての研究動向
大学の農業情報処理技術に関する今後の研究は「マルチメディア」の導入、すなわち先端研究は、インターラクティブな処理を前提に、カラー写真、3Dアニメーション、ビデオ、音声等、多様な入出力の実現とその利用ソフト・ウェアの開発であると言う。また、現在、利用されている病気診断、雑草の種類判別、適性品種選択、肥料・農薬選択等にデータ・ベースを知識ベースに置き換えて、ヒット率の向上、AI判別精度の向上を目指している。
さらに情報電送能力の向上に伴って、遠隔地間で高速、かつ安価にに画像データを転送したり、「電子取引」の実現にも期待されている。加工用豚枝肉の取引にカナダのビデオテックス会社が電子取引を取り入れたのは15年前であったが、当時は解像度やコストの点でその後の広範な普及をみなかった。しかし、後述するが、テキサスでは綿花や子牛の取引に衛星通信によるサテライト・オークションが開始した。今後は野菜、果樹や農機具、農場の売買にも利用の道が開けてゆく見通しである。
従来の数値データに比べて桁外れに膨大な情報量となる画像データの手元での利用や保管にはCD−ROMの利用が進んでいる。さらにヒューマン・インターフェイスを一層高める観点から、AI技術を駆使した音声認識、画像認識のソフト・ウェア開発も進められている。自然環境保全や農地保全、農村計画に欠くことの出来ない地図・地形情報は、衛星や航空機からモニターした「地図表示情報:GIS」を利用して三次元化、精度向上が図られている。
2)知的処理ソフトウェアの農業経営への利用可能性と課題
近年は地理情報システム(GIS)、グローバル・ポジショニング・システム(GPS)等の利用可能性が脚光を浴びている。GISやGPSによる広域的で精度の高い環境モニター、収量予測、土壌の水分量や腐食量推定等に高い関心が寄せられており、精力的な研究が行われている。例えば、オクラホマ大学と肥料会社の共同で、GISを応用した地域別、作物別、時期別の施肥基準を研究している。同大学の研究によると、効果的な施肥方法を採用した場合、エーカー当たり100$〜300$の肥料代が節約できる可能性があると報告しており、環境保全とコスト節減の双方で高い効果が得られると言う。
他方、一頃脚光を浴びた人工知能やエキスパート・システム等の知能処理技術は、病害虫診断のようにユーザーに対して直接意思決定支援するソフトの開発には行き詰まりの感がある。フロリダ大学で質問したところ、即座にかえってきたソフト名は“PLANT_IT!−CD”であった。本ソフトは、1993年に完成したものであるが、現在利用できるエキスパート・システムのソフトとしては最も実用性の高いものの1つであると言う。CD−ROM版で、アメリカ国内で植生する1,000種類の植樹用樹木(庭、公園、街路等)がDBとして登録されていて、立地条件とユーザーの希望にかなう樹木をエキスパート・システムで絞り込みつつ選択するソフトである。
テキサスA&M大学で同じ質問をしたところ、綿花の成長モデルを応用した病害虫発生予察と最適防除法に関するエキスパート・システムCOSSYM/COMAXの開発に長年取り組んでいると言う。しかし、今以て実用システムとして完成していないとのことである。概して、農業分野での知識処理型ソフト・ウェアの製品は限られているようである。
ただし、最近になって温室内環境の自動制御装置、搾乳ロボット、圃場の自動灌漑・排
水ロボット等がインターフェイスの発達と相まって日の目を見るのは近そうな段階に来て
いる。
テキサスA&M大学普及部コンピュータ利用部部長のL.リプケ教授の「どれをとってみても、農業経営の営農支援に利用するには、実用に耐えうるアローワンス内の処理精度、あるいはコスト・パーフォマンスに課題がある」という回答がアメリカでの大方の意見を集約していた。農業経営に知的処理技術が真価を発揮するのはもう少し先のようである。その理由として教授が第一に挙げたのは、農業経営に役立てる外部情報(データ・ベース等)が時間、空間、費用の制約を越えて入手できる環境が整いつつあるが、知識処理ソフトを開発するための、肝心の知識情報の蓄積がまだ不十分であると言う。
テキサスA&M大学普及部で紹介された「実用化が目前」であると言ってJ.サントス助教授が紹介してくれた論文は、トマトの収量予測に関する研究であった。しかし、これは従来の数学的モデルによる接近法であった。すなわち、骨子となる予測式は、
Yp =Ym ×Πij(1.0×YRij)
ただし、Yp :推定収量、
Ym :最大実験収量
YRij:成育ステージjにおける因子iが及ぼす減収量、
各々のiとjに関するYRを圃場実験に基づいて回帰式推定する。YRijの推定式には、4つの成育ステージと8種類の環境・経営因子(技術因子)が考慮されている。すなわち、成育ステージとしては発芽ステージ、栄養成長ステージ、開花・子実形成ステージ、果実肥大ステージの4段階、環境・経営因子としては窒素養分量、燐酸養分量、加里養分量、温度、日照量、水分量、バクテリア・ウイルス感染度、ネマトーダ感染度である。この予測式を35種類の圃場試験で予測精度を確認したところ75%の予測精度であったとの結果を得ている。この水準に到達するまでにはかなりの資金と時間をかけているとのことである。〔紹介してくれた文献は、J.R.A. Santos, A.A. Gomez, and T.L.Rosario, A Model to predict the yield of determinate tomatoes, Horticulture Science, Vol.-50, 1992. 〕。
ただし、その手法は従来からの数学的シュミレーションの技法である。農業分野の情報処理に固有の問題として、サイト・スペシフィックへの対処、曖昧性への対処に関して課題がある。サントス助教授の、従前のゼネラル・モデルよりは一歩改良されているという返事には著者も同意できる。環境・経営因子を考慮して、サイト・スペシフィック問題へ対処しようとしているからである。しかし、このモデルを現実適用しようとするサイト(環境)や成育状況をどのようにモニターし、どのように定量すするかが考慮されていない。植物成長状況や圃場状態の観測データに付随する曖昧性の扱い、また情報処理過程で考慮しなければならない曖昧性への対処は不十分である。
テキサスA&M大学普及部での知識処理ソフトウェアの開発に関するヒャリング、および筆者との討議の結果を要約すると次の2項になる。いずれも、農業生産という有機技術を前提にした情報システムの進化への挑戦と捉えている。
(1)極めて微弱信号である生物層の生体情報を如何に栽培技術、飼養技術の改善、持続的農法の確立に日常的に応用できる処理技術。また、膨大なデータ蓄積を前提にするが、複雑な諸相をデータに的確に語らせる“データ・マイニング”技術。
(2)制御困難で、従って観察データが観測誤差、曖昧さを含むことに鑑み、また、経営者の意思決定場面における意思表明の曖昧さ、行動目的の多目的性、行動性格の多属性に鑑み、ファジィ理論、カオス理論、多目標理論等を取り入れた処理技術。
しかし、これらの高度情報処理技術が花開くには、さらに膨大なる時間と人的投資が必要な見通しである。
3)テキサスA&M大学の農業経営者支援ソフトウェアの開発
農業経営者をユーザーとするパソコン処理ソフトを開発している大学とそうでない大学がある。実際、今回訪問した大学で、コーネル大学はパソコン・ソフトを開発していない。他方、テキサスA&M大学やフロリダ大学では、普及担当スタッフが精力的にソフトウェア開発を行っている(パデュ大学やミネソタ大学も)。そして、普及部とは異なる部署になる大学の“Software Distribution Center”がソフトウェアの販売を担当している。
大学がソフト・ウェア開発する意図は、最先端の大学の研究成果を普及活動に反映させることにあり、良質のソフト・ウェアを安価に提供する。テキサスA&M大学やフロリダ大学のソフト・ウェア・カタログを参照すると、概略25$〜150$で、州外販売には5$のプレミアムがついている。
良質のソフト・ウェアを提供するという点では、大学で開発したソフト・ウェアと言えども所定の評価手続きをクリアーしたのもが、公開されるようになっている。それはソフト・ウェア・ディストリビューション・センターの重要な任務になっている。テキサスA&M大学の場合は次のような手続きを経る。
(1)完成したソフト・ウェアを普及部に仮登録する。
(2)学内の講義に利用したり、諸行事にデモストレーションし、改善の余地のあるものは改善するし、バグを除去する(ソフトウェア・レビュー期間)。
(3)1年後にマニュアルを添えて正式登録申請する。
(4)普及部編集委員会の審査に合格したものを登録ソフト・ウェアとして承認する。
(審査は“マイナー・テスト”と表現されている。決して、公開を規制するような
意味の内部審査ではない)。
農業者は電話注文、E−mail注文して、郵送やファイル転送で希望するソフトウェアを受け取ることができる。
参考に、テキサスA&M大学普及部発行の95年度版ソフトウェア・カタログ〔Texas Agricultural Extension Service, Software Catalog, 1995. 〕から公開・販売されているソフトウェアを処理分野別に分類して概略紹介しておこう。
(1)灌漑管理ソフトウェア 3本
(2)病害虫判別・管理ソフトウェア 22本
(3)水産業・漁業ソフトウェア 6本
(4)気象・干ばつ被害予測ソフトウェア 7本
(5)家畜管理ソフトウェア 23本
(6)農機具利用コスト管理ソフトウェア 2本
(7)家庭経済管理ソフトウェア 2本
(8)経営財務管理・経営計画ソフトウェア 5本
(9)ユティリティ・ソフトウェア 2本
なお、上記ソフトウェア・カタログを参照するための同大学のE−mailのアドレス(URL)は次の通りである。
http://leviathan.tamu.edu:70
一方、市販ソフトを購入しようとする場合でも、農業者は大学の専門家が吟味して各市販ソフトの内容、特徴、評点を示す普及部発行の「ソフトウェア・レビュー」を取り寄せ、これを参考にして選択するのが通例である。一例として、テキサスA&M大学の簿記ソフトのレビュー〔Texas Agricultural Extension Service, Financial Record-KeepingSoftware Review, 1995. 〕を紹介すると、主要な市販ソフトの概要、使い勝手、価格、サポート・センターの住所等を解説した後、各評価項目を立てて、これに対する(Yes/No)形式で評価一覧を示している。ここに、その評価項目の大項目だけを列挙しておこう。
(1)コンピュータに要求するスペック、
(2)ソフトウェアの主要な処理目的と特徴、
(3)元帳の仕分け機能性、
(4)出力帳票の種類、
(5)税金管理機能、
(6)各種勘定項目の処理機能
(7)その他の処理機能、
(8)表計算ソフト等とのデータ互換性、
(9)インストール、セットアップ機能、
(10)サービス、パックアップ体制、
等である。これらソフトウェア・レビューは公正中立で大変権威あるものと見做されており、健全な農業経営ソフトウェア市場の育成に寄与している。
なお、アメリカ農業エンジニァ学会(American Agricultural Engneer Association )と各大学普及部の共催で、「農業普及活動におけるコンピュータ利用」(Computer-uses for Agricultural Extension)という国際会議が毎年北アメリカのどこかで開催されている。新作の農業経営支援ソフトウェアを発表し、そしてデモする。また、この会議冊子から農業用ソフトの最新情報が得られる(96年は6月にメキシコで開催予定)。
テキサスA&M大学普及部が開発したソフトのベスト10の1つに、後述する“IRM−SPA”(Enterprise Production and Finance Integrated Resource Management−Standardized Performance Analysis:農企業経営総合的資源管理・標準診断分析ソフト)がある。その作成者である先のマックグラン教授は言う。「営農情報の基本となる財務管理ソフトには3種類(段階)ある。簿記記帳ソフト、財務諸表作成ソフト、そして経営診断・計画ソフトである。しかし、市販でペィしているのは簿記記帳ソフトでは“Quicken”、財務諸表作成ソフトで“Mind Your Own Business”等2〜3種類で、農業経営管理用の部門別診断・計画ソフトともなると大学普及部で開発するしかない。」〔蛇足ながら、アメリカがクレディト・カード利用国だからであるが、Quickenは、American ExpressやVISA等のカード取引データをCompuServe等から直接取り込むことができる。〕
「なぜなら、商業ベースに乗せるには最低5万本以上売れなければならない。とても、農業経営管理用の部門別のそのようなソフトで商業ベースに乗せることは不可能である。SPAはパソコンの機種、OSに制約を受けない製品にして(DOS版とWINDOWS版がある)販売しているが、これですらせいぜい4千本に過ぎない」と。なお、SPAの価格は100ドル、保守サービスと電話相談は無料である。
さて、そのSPAは酪農・肉牛育成経営用、そして穀作経営用が用意されている。現在はバージョン6.1に至っている。同ソフトは農業簿記・会計学専門のマックグラン教授をリーダーとしてして、テキサスA&M大学普及部のみならず、U.S.D.A.、オクラホマ大、コロラド大、ネブラスカ大、アイオワ大等の技術部門の専門家を含む開発チームを組織して開発してきたソフトウェアである。酪農・肉牛育成経営用SPAは、この開発チームの上位組織として全国の生産者の代表と大学、農務省、そしてNCA(National Cattlemen’s Associaton:全国家畜生産者協会)から構成された企画開発委員会がある。つまり、産官学挙げて取り組んできたソフトウェアということになる。
ソフトウェアはLotus1−2−3上で作成されたもので、スプレッド・シート用の専用コンパイラーであるBalerTMで編集されている。ソフトウェアはデータ互換性が保たれた生産分析用サブ・ソフト(SPA−PCC)と財務分析用サブ・ソフト(SPA−FCC)の2つから成り、マスター・ソフトがこの全体を管理する。データ・ファイルは生産者ファイルと西暦年ファイルが常にペァになって管理されている。主記憶640kb、ハード・ディスク容量2MBの小型パソコンで動作する仕様の下で作成されている。起動させるとLotus表が画面に表れ、メッセージに従って記帳、および分析操作を進める。もち論、ファンクション・キィへの機能の割当てやオンライン・ヘルプが用意されているので、コンピュータ操作に知識がないユーザーでも直ちに利用できるようになっている。
本ソフトウェアの特徴を整理しておく。
(1)マックグラン教授が最大限に強調したことであったが、分析概念の標準化、従って分析に用いる数値、計算式、解釈の統一化がなされている。SPAがソフト名に「標準」という用語を使っているのはそのためである。そのマニュアルになっているのは、アメリカ財務分析標準化委員会(Financial Accounting Standards Board)の「財務分析標準規則」(GAAP:Generally Accepted Accounting Principles)に従って「農業経営財務分析標準化会議」(FFSC:Farm Financial Standards Council)が、その農業経営版として作成した「農業経営財務分析標準規約」(FFSTF:Farm Financial Standards Task Force)である。標準規則を採用することで、農業者に正しい簿記用語の理解を与えるとともに結果表の解釈における混乱を解消する努力がなされている。納税申告書用としてもオーソライズされている。他のソフトによる診断値との比較が可能である。
その他にも筆者が高く評価したい点が沢山ある。
(2)作目部門別にサブ・ソフトが用意されている、
(3)定期的にユーザーである農業経営者、そして会計士、税理士の専門家、銀行、他の類似ソフト取扱業者を呼び、トレーニング・コース、ワークショップ、モニタリングを実施してソフトウェアの普及とバージョンアップを図っている、
(4)診断指標の標準値、目標値等が既にファイル入力されている、
(5)マニュアルは原則としてテキスト・ファイルで用意されている(普及員用とユーザー用がある)、
(6)ソフトウェアを使う前の簿記の知識を習得するために、練習用ワーク・シートが用意されている、
(7)ソフトのオンライン・ヘルプ機能はもち論であるが、大学に常に2名の電話相談員(学生アルバイト)を待機させている、
要するに、本ソフトの開発上のコンセプトは、「パソコン操作上のユーザーへの負荷は可能なかぎり軽くし、処理している内容や結果解釈等はしっかり勉強してもらう」であると語彙を強めてマックグラン教授は言う。
4)アメリカ農務省のソフト・ウェア開発支援
アメリカ農務省が目指している農業政策の基本は、より一層市場指向型産業である。財政援助を伴った農業政策はその位置を低下させている。その代わり、経営能力(Skillness)向上支援やそれを間接的に支援する情報化推進を重要な農業政策として位置付けしている。農務省内の情報化推進の体制は、ERSのような統計書作成や各種レポート報告の部署、そして大学普及部を統括する部署であるCRES(Cooperative StateResearch, Education & Extension Service )に大別されそうである。
前者は大学や地方行政機関、民間団体等にオリジナル情報を提供する。後者のCRESは、USDAと大学と全国の市町村を構成メンバーとする“Cooperative Extension System”を形成している。ここで普及活動の方針や予算が検討され、連携して活動する。
CRESの情報化推進に関わる現在の主なプロジェクトは次のようなものである。
(1)大学との共同でソフトウェア、CD−ROM、ビデオ・ライブラリー作成支援
(2)郡普及所のコンピュータ・スペシャリスト養成支援
(3)農業経営者のコンピュータ利用技術、経営管理への情報利用の教育支援
上の(1)に関して特筆すべき事業について言及しておく。1つは、LISA(最小投入持続的農業)を普及させるためのソフトウェア“PLANETOR”をミネソタ大学普及部と共同開発している。現在は1995年に完成した“PLANETORII”が提供されている。LISAを実践する場合の経営分析・計画ソフトで、採用する営農技術の自然環境の保全/劣化と収益性のトレード・オフを試算分析するソフトである。
2つ目は畜産情報データ・ベースのCD−ROMについてである。ウィスコンシン大学酪農経営研究センターとの共同プロジェクトである。畜産技術が早いテンポで進歩していること、専門化が進んでいることから、現場普及員のための指導用辞典を目的としている。酪農DB(NDD:National Dairy Database )と養豚DB(NSWD:NationalSWine Database )が1990年に完成している。タイトル検索、用語検索、人名検索等が可能である。現在は1992年に改定したバージョン2.0を供しているが、この時、CD−ROMでの製品化に踏み切った。農業者の直接利用も視野に入れてのことである。1996年にはWindows版のV3.0をリリースする予定になっている。値段も従来の99$を45$に値下げする。なお、1996年には、肉牛、綿羊・山羊、淡水養魚、海洋漁業、飼料作物のDBも市販を開始する。
3つ目は、コーネル大学附属図書館との共同によるUSDA電子図書館システムである。これについては後段で説明する。
なお、現在、USDAが掲げる大きなプロジェクトとして、1983年から始まった“Info−Share”がある。これは、USDAの縦割り組織の弊害で、地方出先事務所や農家にとって、二重、三重のデータ収集とデータ(情報)提供のダブリがある無駄と煩雑さを省くために、データ収集、提供システムの部署間の連携性を高めようとするものである。大胆な行政機構の改革とも連動している。
2)CD−ROMの普及
インターネットに目を奪われがちであるが、CD−ROMの利用も非常に進んでいる。USDAのセンサスはCD−ROMで販売されているのは周知の通りである。フロリダ大学には「教育用メディア製作所」(Educational Media Service)があるが、ここでは大学普及部活動用、成人教育用(一般向け)のテレビ番組制作、教育ビデオ制作、農家向け雑誌類とCD−ROMの製作を担当している(テレビ番組は、公共放送のPBSに売っている)。
CD−ROMの制作を開始したのは1990年からである。そこに至る経緯をA.ワイナ技師はこう説明した。1970年代は、普及活動支援を目指して、大型コンピュータを使って巨大なコンピュータ・シュミレーション開発を試みたが、シュミレーション予測のコスト・ベネフィット、操作性等の点でどれも中途半端であった。1980年代になってからはハイパー・テキスト技術が応用できるようになったが、作成支援ツールが不十分であったことや、応用分野の研究が貧弱だったため、ケース・スタディ的にデモ・ソフトを作成して終わった。1980年代の後半になると、Expert Systemの開発が注目されたが、知識不足、データ不足から限られた分野での成功に留まった。こうしたソフトウェア開発の歴史を辿って今日迎えている段階が、CD−ROMに大量の画像、音声データを詰め込んだ教育ソフトウェアの開発であると言う。
現段階では、CD−ROMはインターネット利用よりもコスト安で、操作が簡便、画像情報が大量にある場合にはアクセスが早いという利点がある。しかも、農業分野では将来的にも農家段階でのインターネット利用は少ない。これらの理由から、同製作所では、アニメ、動画写真、音声をふんだんに取り入れて人目を引く数多くの教育用ソフトやデータベースを作成、販売している。既にリリースしているCD−ROMは、先述した“PLANT IT!−CD”、“FAIRS CD−ROM/Multimedia Data base”、その他33種類もの“課題別Extension Handbook”である。
CD−ROMは視覚、音響も重要なため、従来のコンピュータ・ソフトの専門家だけでなく、AV教育専門家との共同制作であるという。また、その学際的な研究ニーズに応えるために、“Agricultural Communicators in Education”という専門学会を組織している。もち論、CD−ROM作りに特化しているのではないが、この学会メンバーが効果的な農業者用CD−ROMのデザインに関する研究を行っている。
3)コーネル大学のインターネット電子図書館
農業分野の文献検索データベースとして古くから“AGRICOLA”が親しまれてい
るが、最近、コーネル大学農学部の附属図書館(Mann Library)にUSDA
の委託を受けてジョイント・プロジェクトとして完成させた「電子図書館」がある。WW
W、Gopher、FTP、TelnetのいずれからでもUSDAデータにインスタン
ト・アクセスできる。附属図書館のWWWホーム・ページ・アドレスは、
http://www.mannlib.cornell.edu
である。初期メニューの「USDAライブラリー」を開けばよい。USDAの次の3つの
統計関連部局が公表している情報を参照できる。
(1)ERS(Economic Research Service )、
(2)NASS(National Agri. Statistics Service )、
(3)World Agricultural Outlook Board、
データ情報(Data Sets)と文書情報(Reports)の2種類がある。データ情報も文書情報も上の3部署がこれまでプリントして配付してきた馴染みの農業生産、農産物市場、農産物貿易、農村に関する統計書や調査報告書である。検索したデータはLOTUSかEXCEL上で参照でき、またレポート(Situation & Outlook等)はテキスト・ファイルになっている。なお、USDAの統計書名、農業図書名、農業関係機関名や人名検索もできるようになっている。
AGRICOLAやDIALOGUEのオンラインDB検索もここからアクセスできる。ついでながら、コーネル大学のシラバス、学生のレポート提出、学生と教官のQ&Aも上記のMann−Libraryのホーム・ページにあった。24時間利用でき、ダウンロードできる利便性から、アメリカ全国の大学教官、学生、そして普及部スタッフ、あるいは農業者、関係者に広く利用されている。
4)テキサスA&M大学の電子会議室ネットワーク
テキサスA&M大学には地方の付属研究所とのネットワーク網を利用した「多方向電子会議室ネットワーク」(TTVN:Trans−Texas Videoconference Network)が運用されている。“T1−line”規格の回線によるもので、データ通信に768KBを割りつけ、残りの768KBを2ラインに分割して電子会議室用に利用している。テキサス州内の20か所の大学施設、州政府機関に44室の電子会議室(うち、College Stationのメイン・キャンパスには10室)が設置されている。
アメリカの伝統ある州立大学にとって、農業普及部は地域に対する重要なサービス活動部門であるが、それと同程度に重要な地域に対する活動が教育放送部(Educational Broadcast Services)である。テキサスA&M大学のテレビ・ラジオ教育番組放送事業(Educational Broadcast Services、コール・サインは“KAMU・TV/FM”)は同大学教育放送部の最も中心的な事業であることは言及するまでもない。しかし、同部は、この教育放送事業を拡充する形で、教育用オーデオ・ビデオ番組の制作と貸出(販売)、教育番組の衛星放送(全国向け)、そして1990年から多方向通信型の電子会議型システム(Multi−way digital videoconference)を開始した。
大学が運営する電子会議室システムとしては全米最大規模のものであるが、学内・学外の電子会議室システムを稼働している大学は、アイオワ州立大学、スタンフォド大学、ペンシルベニア州立大学、ワイオミング大学、北コロラド大学である。本システムを創設した背景は、テキサス州が地理的に広い面積を有することにあるが、各種遠隔地間の会議のみならず、遠隔地教育に利用しているのが大きな特徴である。
事業実績報告書によると、1994/95年には3,200回の電子会議を開催しており(スタジオ延利用回数は8,600回)、その2/3は大学の秋期、春季・夏期コースや社会人向け公開講座(University Telecourses)で、124科目の講義に利用された。近年、社会人教育が重要になっているが、第1の利点は、大学キャンパスから遠隔地に立地している職業人は最寄りのスタジオ・クラスに出席すればよいことである。第2の利点は、社会人教育は非常に専門化した教科目の講義を要請されるのに対して教授陣が不足している。教授陣をいちいち現地に派遣していては十分な回数のクラスを開講できない。遠隔地テレ・コースによって、効率的な講義スケジュールを立てられる。
受講生の利便制、教育する側の効率性から、非常に有効な講義手段になっており、テレ・コースの需要は年々高まっていると言う。しかし、電子会議室システムの講義は、やはり受講できる場所に制限があることには違いない。今後はその制約のない衛星放送システムの拡充も目指すという(ただし、現在の衛星放送システムでは双方向型にならないという欠点もある)。
5)原料綿花の電子オークション・システム
カナダには“グラス・ルーツ”というビデオテックス網でアルバータ州を中心にした地域の肉豚電子オークションが1970年代の早い時期から実施されている。生産地がカナダ以上に広域なアメリカでも肉豚、肉牛の売買に電子オークションを導入しようとする試験は行われているが、「需要域・供給域が広域なことが返って障害になって関係者間のコンセンサスを得られ難い」というのはテキサスA&M大学のC.アンダーソン教授である。
最近になって、本格的な原料綿花の電子オークションが始まった。“TELCOT”と言われる原料綿花の電子オークションである。オークション端末はテキサス、オクラホマ、テネシー、ミシシッピー、N−カロライナ等の南部の綿花産地の各地に散らばる出荷組合に配置されている。また、全国の綿花バイヤーも同じ端末を保有する。CRTに製品のビデオ写真が映し出され、品質規格や農場名が表示される。最初に買い手と生産者の双方が価格を提示する(Bid Offer)。双方の価格が食い違った場合、生産者が15分以内に販売の意思は販売量を送信して(Farm Offer)売買が成立する。
電子オークションが可能なための第1の前提条件として、生産物の品質の標準化がなされていることである。原料綿花は生産者農協が品質検査を行っているが、厳密な品質評価基準があり(色調、長さ、強さ等による組み合わせで、国際標準になった15段階のグレードがある)、機械検査による公正な品質評価するシステムが確立している(連邦法によって、1ベールにつき2サンプルを抽出して検査しなければならない)。まさに第1の条件が満たされている。
第2には生産者、購買者の双方の全員が参加することである。全国、あるいは国際的な需給実勢を反映した価格が形成されなければならない。そのためには本システム加入費が安価で、かつシステムに加入する経済的メリットを得なければならない。
第3は、買い手が健全な経営をしており、代金清算等にトラブルを発生させる可能性がないことである(第2項と矛盾するが、買い手には参加資格を設けているという)。
アンダーソン教授は、TELCOTの運用によって生産者も購買者も確実にメリットを獲得しているという。教授が列挙したメリットのは次の点であった。
(1)物理的なオークション市場を必要とせず、商品を搬入する必要もないので、私的にも社会的にも取引にかかる経費が節約される、
(2)価格情報が正確に迅速に買い手、売手に伝達されるので、公正な競争が保障される、
(3)小口生産者や小口購入者も価格形成に直接参加できるので、より正確に需給実勢を反映した価格形成が可能になる、
(4)物理的に市場を開設していた過去には、市場の混乱を避けるために市場売買参加者を制限していたが、本システムができたことで、バイヤーにとって遠隔地であることは障害にはならない。システムに加入さえすれば購買できる。これを生産者の側からみると市場の掘り起こしになるし、バイヤーは直接買い付けできる。ブローカーを介する必要がなくなり、流通コストの節減になる。
蛇足ながら、教授が、この電子オークションは日本の米や肉牛、加工野菜の販売にも応用できるのではないかと提案してくれたので、「日本人は味覚、舌触り、鮮度を大切にしているが・・・・」と質問したところ、そのような品質基準を客観評価する方法を確立するのが先決であるとの意見であった。
6)フロリダ大学の野菜、果物価格の音声市場情報システム
アメリカの青果物は、日本のような卸売市場販売ではない。生産者、集荷業者、卸売業者は個々に相対取引するか、契約生産・販売である。従って、生産者は各々が市場情報を収集しなればならないのであるが、現行ではUSDAの郡事務所が生産者や関係業者から売買価格、出荷量をヒャリングし、コンピュータ回線でワシントンに報告する。それが全国集計されて再びUSDAの郡事務所から地域別、時間別Daily Reportとして報告される。関係情報会社、マーケッテング・コンサルタント、大学普及部等に対して市場情報を公表するゲイト・ウェィであり、“Computerized Market News”と言われるものである。
しかし、このシステムが公表する市場情報の内、リアル・タイム市場情報については、如何に早く入手できるかは極めて重要な関心事である。その1つの方法としてフロリダ大学ではUSDAに発信する前の生データを“横取り”し、インターネットのホーム・ページで見ることができるようにしている。これがフロリダ大学の「野菜、果物価格の音声市場情報システム」(VMIS:Voice Market Information System)である。アドレスは、
http://gnv.ifas.ufl.edu/MARKETING/menu/nwls.htm
である。フロリダ州内の市場情報に限られるが、関係者は以前よりは早く情報を入手できるようになった。
しかし、アメリカ有数の野菜、果物の産地であり、しかし消費地から遠隔に立地するフロリダの生産者にはまだ物足りなかった。常時送られてくるデータをコンピュータ入力する時間と手間がかかる。そこで、リアル・タイム市場情報は現場での音声入出力システムとしたのである。USDAに報告する前の州内各地の市場情報を大学で受信し、直ちに音声に変換して、電話回線によるボイス・サービスを行うものである。カスタマーはメニュウで「Voice」を選択するとコンピュータのボイス・システムで報告される。コンピュータ録音もできる。ボイス・システムを持たないコンピュータの場合には側の電話の受話器を取ればよい。電話が自動ダイヤルされて音声で報告される。
このインターネット・サービスでは、従来のファイル化した市場情報データ・ベースについては、グラフ表示したり簡単な価格分析ができるようになっている。E−mailで大学の専門家による動向分析をニュースとして公表している。また包装した状態での商品の写真表示をしている。さらに、カード型DBの市場情報データ・ベースはCD−ROM化して販売もしている。6ヵ月毎に更新して新しいCD−ROMでリリースしている。
7)農業経営情報の衛星通信システム−DTN−
ネブラスカ州のオマハに本社を置く民間企業の衛星通信農業情報会社がある。DTN(Data Transmission Network Corporation)である。衛星回線で農業・農村のリアル・タイム情報を配信サービスする。インタビューを始めると開口一番に「わが社は、シカゴの市況を2秒後にカスタマーに届けている」とPRした。アメリカの国土条件、そして農村部まで高速通信回線を張り巡らすにはコスト的に困難な農村、先物取引を行っている慣習からスピーィディな市況の取得ニーズの高いアメリカの農村情報ネット・ワークとして衛星通信システムを見逃すことはできない。
当社の合計端末数は95年1月現在で93,000台、この内80,000台のカスタマーが農業者、および農業法人で、残りが穀物エレベータとその他の物流会社である。また2,500台がカナダで、500台がメキシコで受信されている。なお、アメリカには、農業者向けの類似の衛星通信システムとして、同社の他にFARM−DATA、ACREがある。
オマハには全米一の小麦市場が開設されている。DTN社を創業した母体は穀物エレベーター会社である。社長自身が市場情報の重要性を十分認識していたので、当時は自社のための効率的な市場情報の入手方法を模索していたのが、社外の第三者への市況情報販売サービス業へと展開した。創業は1984年で、創業時の会社名は“DATA LINE”であった。情報配信の方法も、創業時はFMバンドでのラジオ放送であった。カスタマーは専用のチューナーで受信したが、受信エリアが半径50マイルまでのために送信局の新増設コストがネックになって行き詰まり、衛星通信システムに切り換えた。1987年であるが、その時、親会社から完全独立して再出発した。送信能力が飛躍的に高まり、その後、さまざまな情報を取り扱うこととなる。
DTNは、衛星通信で全国各地から24時間データを受信・配信している。その情報は、シカゴ商品取引所からの各種市場情報、気象情報会社からの気象情報、農業専門ニース通信社からの国内・海外の農業に関するニュース、穀物メジャー、種子会社、肥料・農薬会社からの技術情報、資材情報等である。第3者であるマッケッテング・コンサルタント会社の野菜、果物市況、畜産物市況、気象情報、グレーン・エレベータ会社や市況ニュースの委託配信も行っている。もち論、これらは契約に基づく配信である。
気象情報に至っては、国のNational Weather Serviceの他に、民間3社(CROPCAST、WSC、Kavouras)の発表する気象情報の配信サービスを行っている。これら民間会社の気象情報はなかなかきめ細かい。例えば、WSC社 (Weather Service Coop.)のCrop Weather Forcastは、とうもろこしの生育に重要な“Heat degree days”の他、30日雨量、耕土中温度・湿度、作物中湿度指数等も公表している。これらは穀作農家にとって重要な情報であるが、USDAや民間マーケッテング・コンサルタントにも、生産予測や価格予測に重要なデータとして活用されている。
情報の収集側をみると、DTNが直接収集する情報、そして専門の情報元売り会社から購入する情報(USDAから入手する情報は無償)、さらに情報を売る別会社の配信サービス業務の受託である。なお、現在は農業関連情報だけでない。CNNのTVニュース、ウォール・ストリートの株式市況、中古自動車・農機具販売会社の商品情報サービス、原油の元売り相場等、農家向けから農業関連産業へ、さらに一般ビジネスへと顧客層を広げている。
契約農家にはパラボラ・アンテアと専用端末“ACE”(Advance Communication Engine)をリースする。だが、ACEは、通称、“DATA BOX”とんでいる。理由はコンピュータのイメージを払拭するためである。さらに現在のDATA BOXはカラー表示であるので“COLOR BOX”とも呼んでいる。全て当社が開発した製品である。
操作は、基本的には電源投入して番組をメニュー選択するだけであり、テレビ感覚で情報が得られる。画面はズーム機能を有するウインドウ・システムで、テキスト・データだけでなく、グラフ表示もする。“Personal Libraly”というページ・イメージの記憶装置、グラフィックのダウン・ロード機能、ハードの自己診断機能を有する。一ヵ月当たりのモデム込みの賃貸料は、6000シリーズ(80MBのハード・ディスクを持つ)が46$/月、7000シリーズ(170MBのハード・ディスクを持つ)が56$/月である。
DTN衛星通信システムの売り物の第1は迅速な情報配信である。シカゴ穀物取引所と本社は光ケーブルで接続されている。シカゴ市場情報は、実物取引は日ベースであるが、先物取引は15分間隔で契約カスタマーに配信されている。問題はそのスピードである。スタンダード契約なら商品取引所がリリースして15分後にDTN回線で公表するが、月50$付加の特約者には2秒後に届ける。なお、DTN自体は価格予測等のデータ分析は行っていないが、マーケッテング・コンサルタントは契約カスタマーに対して予測結果や解説、アドバイスをDTN回線を通じて配信している。
第2に、当社の基本的な製品開発戦略に基づくものであるが、「情報収集にはコンピュータの知識を必要としない」ということである。現在の情報収集はコンピュータ知識を不可欠にしているが、当社の開発する端末はテレビ感覚の操作で、しかも24時間自動受信できることにある。
第3番目に、会社側にとっても利点にあるが、サービス・エリアがアメリカ、カナダ、メキシコと広範である。イニシャル・コストは高額ではあるが、利用者の普及によってユーザー・コストは低下する。国土が広大なアメリカでは、この衛星通信方式が急速に普及してきている。当社の現在の受信端末数は10万戸であるが、5年後に25万個を予測している。ただ、現在の衛星通信方式には双方向性がないのが大きな欠点である。